陽気なギャングが地球を回す
「サンタクロースの恰好をした男の大半はサンタクロースじゃない」
(文庫版P8より)




人間嘘発見器・天才スリ・演説名人・人間ストップウォッチの4人は、百発百中の銀行強盗。
…だったのだが、その日、思わぬハプニングが…?



 軽妙洒脱なクライムノベル。確か映画化もされていましたね。

 銀行強盗なんですが、主人公たち4人も脇役も、非常にキャラクターが立っていて、魅力的。話そのものはもちろんのこと、登場人物たちの会話が良いです。
 ライトノベルみたいに読み易いということと、無駄のなさや上手さということが両立しているなぁと思います。ご自身が後書きで書いておられるように、「90分くらいの映画」みたいな話。

 リズムに乗っかったまま伏線を回収していく、そのテンポが絶妙です。伏線そのものはわりと分かり易く散らされているのですが、その纏め方の綺麗さが好みでした。
 わりと軽いタッチなので、さらっと読めると思います。





<!以下、ねたばれです!>






 個人的に一番良かったのが、成瀬さんのこのひとこと。
 「君を驚かせたかった、というのもある」(P253)
 …成瀬さん、良いキャラしてますね(笑)。この話は本当にキャラクターがみんな良いですが(4人組以外でも、祥子さんなんかもう、大好きです)、なかでも成瀬さんと久遠がとても良い。

 中盤で、電話を介してふたつの場面が繋がるところ。あれは上手いな、と思いました。他にも、色々なエピソードがあって、そこに無駄がなくて、しかも面白い。全体的に良かったです。

 そういえば、途中でドストエフスキーの『悪霊』からの引用があって笑いました(ドストエフスキーはこれだけ読んだことがあるもので)。うろ覚えだけれどこの台詞、ピョートルという人物だったと思います。いや、響野さん、ある意味似てますよ(笑)。
 
■おまけ:用語解説?■
 各節の初めに書かれている言葉に、毎回ニヤリとしました。一章の「成瀬U」の「火星」とか、「響野V」の「反省」とか、その他諸々、傑作が多いですね(笑)


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