死神の精度
「俺が、仕事をするといつも降るんだ」
(文庫版P29より)




死神はひとの死を判定する。死神は姿や名前を変えて現れる。そして死神は、ミュージックが好きである。
そんな死神のひとりが仕事をするとき、天気はいつも雨になる。今日も、空は雨。



 死神が主人公の、短編連作です。もともとはそれぞれ違う雑誌に掲載されたのをまとめたようですが、これは一気に読んだほうが良いのではないかと。

 人間の姿をとって、死ぬべしと判定された人間を調査し、「可」か「見送り」の判定をするのが死神の仕事。そのうちひとりが仕事をすると、いつも雨が降る。
 そんな短編連作で、ところどころに繋がりが盛り込まれているのが面白いです。お馴染みの、別作品とのリンクもあり。伊坂さんファンのひとはぜひ繋がりを見つけて下さい。

 それぞれの話は読みながら微妙に物足りないような感じがするのですが(いつもほどの伏線がないからか)、ラストがとても良いです。最終話を読んで、この作品もとても好きになりました。

 いつも通り、淡々とした筆致。
 これを読みながら、伊坂さんは人間以外の視点から描くのが上手いなあと思いました。人間の視点からでは見えないことが、この書き方のために見えてくる気がする。「人間はどうして〜」というふうに疑問を提示する部分が、面白いのと同時に、「確かになあ」と思えます。





<!以下、ねたばれです!>






 「死神」という設定の生かし方が、さすがに伊坂さん、とても上手いと思いました。「人間ってどうして〜」というふうなシーンもそうですが、最終話が最初の話から何十年もあとの話である、というあたり。
 死神さんがずいぶんと人間っぽいものだから、ついつい時間軸がそれほどずれていないと思ってしまうのですが、それを逆手に取られた感じ。
 死神が主人公というのは最近多いですが、これはなかでも設定を生かした話という意味で、抜きん出ているんじゃないでしょうか。

 あと、個人的には、千葉さんの判断が「可」であることが多いというのが好きでした。
 助かってしまう話も勿論いいんだけれど、この死神の設定で、それで毎回「見送り」を出していたとしたら、私はこの話が好きになれなかったと思うのです。

 話も良いんですが、死神の千葉さんが要所要所、笑えるし可愛いしで、頬が緩みました(笑)。特に「カタオモイ」の話をする千葉さんとか。音楽に喜ぶ千葉さんとか。今度、CDショップに行ったら試聴コーナーに眼がいってしまいそうです(笑)。

 ちなみに千葉さんの台詞で個人的に最高だと思っているのは、「年貢制度は今でもあるのか?」(笑)。


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